放射線って何?
放射線とは、大きく分けて次の2種類のものを言います。
病院で使用される放射線のほとんどは①の方で、電磁波です。
(②にあたるのは放射線治療の中の一部など。)
たとえば、胸部のレントゲン撮影やCT撮影で用いられているのは①の電磁波の方です。
ちなみに電磁波には、携帯電話などで使われる電波やヒータなどで使われる赤外線、目に見える光の可視光線、日焼けをおこす紫外線などがあります。
放射線はこれらの仲間で、違いはエネルギーが大きいということです。
放射線と放射能は違うの?
放射能とは放っておいても放射線を出す能力・性質、またその強さをいいます。
ちなみに放っておいても放射線を出す物質は放射性物質と呼ばれます。
電球の場合は電気を与えないと光が出ませんが、放射性物質は放っておいても放射線を出します。
放射能という言葉が放射性物質の意味で用いられることもありますが、放射能が漏れた・放射能を浴びたといった表現は本来の意味からすると正しくありません。
検査による被ばくで身体に影響はないの?
身体への影響を考える場合、次の3つのことを理解しておく必要があります。
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基本的には被ばくした身体の場所にしか影響はでません。
基本的に検査部位以外は放射線を浴びませんし、放射線を浴びていない場所に放射線の影響が出ることはありません。
たとえば胸部のX線撮影を行ったために、髪の毛が抜けるといったことはないということです。
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一部の影響を除いてある量以上被ばくしなければ影響はでません。
放射線による人体への影響は、その影響ごとに決まった量以上の放射線を浴びなければおきないということです。
その量はしきい線量と呼ばれます。
以下に影響の例とそのしきい線量を示します。Gy=グレイ:吸収した放射線のエネルギーの総量(吸収線量)を表すSI単位
不妊
男性の精巣に 3500~6000mGy(永久不妊の可能性)
650~1500mGy(一時的不妊の可能性)女性の卵巣に 2500~6000mGy(永久不妊の可能性) 胎児への影響
胎児(着床前期)に 100mGy(胚死亡・流産の可能性) 胎児(器官形成期)に 100mGy(奇形の可能性) 胎児(胎児期)に 100mGy(発育の遅れの可能性) 胎児(胎児期)に 100mGy(知恵遅れの可能性) 皮膚への影響
皮膚に 200mGy(初期一時的な紅斑)
3000mGy(一時的な脱毛)同じ量の被ばくでも、それを短時間で浴びたのか
長期間で浴びたのかによって影響の大きさが異なります。同じ放射線量の被ばくでも、それを短時間で浴びたのか、長期間で浴びたのかによって影響の大きさは異なります(短時間で浴びたほうが影響は大きくなります)。
たとえば、毎日1ずつ100日かけて浴びた場合と、1日で100浴びた場合では前者の方が影響は少ないという意味です。
つまり、人体への影響を考えるとき、単純に被ばくした線量の足し算で決まるものではないということです。
がんになったり将来生まれてくる子に影響はないの?
「検査による被ばくで身体に影響はないの?」で記載の「一部の影響」にあたるのがこの2つの影響で、これらにはしきい値がありません。つまりどんなに少量の被ばくでも影響があり、被ばく量が増えるほどその発生確率はあがるとされます。
ただし、この考えは仮説で現在でもはっきりしたことはわかっていません。この仮説のもとは広島・長崎における原爆被爆者の調査などからで、たくさんの被ばくをした場合、その量が多いほどがんの発生確率が上がっているという事実からです。しかしながら、被ばく量が少ない場合(200mSv未満)では、がんの統計的に有意な増加は認められていません。
一方で、放射線防護の基準を設けるためには、少ない線量の被ばくにおける影響についてもなんらかの仮定をとらざるをえないため、法令などはこの仮説をもとに作られています。ここで一般的な検査による被ばく量(実効線量)を以下に示すます。
胸部単純X線撮影 0.02mSv 頭部CT撮影 2mSv 胸部CT撮影 8mSv 腹部CT撮影 10mSv 骨盤部CT撮影 10mSv 「検査による被ばくで身体に影響はないの?」では身体の各部位の線量を吸収線量(Gy)で示していますが、がんと遺伝的影響についてはmSv(実効線量)で被ばくを評価します。
「検査による被ばくで身体に影響はないの?」で示した吸収線量とは数値が異なることに注意してください。